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そば茶


 そば茶が市販製品として開発・販売されたのは、昭和50年代に入ってからのことです。最近は、家庭で楽しむ人も増えています。
 お茶には緑茶のほか、大麦を殻付きのまま煎った麦茶や、番茶に焙(ほう)じた玄米を混ぜた玄米茶などがあり広く親しまれています。そば茶もそのひとつで、特徴は何といっても、ソバならではの芳ばしい香りと、まろやかな風味でしょう。

 そば茶の原料は、玄ソバを蒸してから殻を取り除いたソバの実(そば米)で、これを煎って作られています。したがって、成分はソバ100%です。
 (財)日本食品分析センターによる分析値では、湯で浸出させる前のそば茶には、主な栄養成分として、たんぱく質7.7%、脂質1.1%、灰分1.1%、食物繊維0.9%が含まれおり、原料であるそば米の成分と大差はありません。

 一方、緑茶の栄養成分を煎茶(浸出前)で見てみると、たんぱく質24.5%、脂質4.7%、灰分5%、食物繊維46.5%です。このように両者の成分組成に大きな違いがあるのは、そば茶は穀物の加工品であり、緑茶は茶葉の加工品ということを考えれば、当然のことといえるでしょう。

 しかし、そば茶も緑茶も、そのものを食べるわけではなく、浸出液を飲料として楽しむものです。したがって、これらの栄養成分の比較にはあまり意味がないと思われます。健康面で意味があるのは、ビタミンやポリフエノールなどの機能性成分です。

 よく知られるように、緑茶には、ビタミンCやポリフェノールの一種として話題になったカテキン(タンニン)が含まれています。カテキンには、抗菌作用、抗腫瘍作用、血圧降下作用、血糖値降下作用、消臭作用、虫歯予防作用といった、さまざまな機能性があることが分かっています。

 一方、そば茶にはビタミンCはまったく含まれていません。しかし、ソバならではのポリフェノールであるルチンが含まれているのが、最大の特徴です。先の分析結果では、そば茶100gには1.8mgのルチンが含まれています。おおむね、そば粉の含有量の2割程度です。

 もっとも、お茶は浸出液を飲むものなので、他の栄養成分と同様、これらの薬効成分の大半は利用することができない、という欠点があります。
 たとえば、煎茶の場合、茶葉には100g当たり260mgものビタミンCが含まれていますが、飲む段階の浸出液になると6mgに激減してしまいます。カテキンについても同様で、お茶として摂取できるのはほんのわずかにすぎません。
 これはそば茶にもいえることで、いくらルチンが含まれているといっても、その供給源として過度に期待することはできません。

 そば茶の場合は、たんに飲料として利用するだけではなく、お茶漬けなどに振りかけて風味を添えるとか、粉末にして菓子類の材料とするなど、いろいろな利用法があります。つまり、粒そのものを丸ごと食べてしまうため、ルチンをムダなく摂取することができるわけです。

 なお、そば茶にもタンニンは含まれています。ただし、量はわずかで、薬効は期待できませんが、そのために飲みやすいというメリットになっています。また、カフェインはまったく含まれていないので、睡眠の邪魔になる心配はありません。

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