うどんが白いのは漂白した小麦を使っているから?

 よく「うどんは白い」といわれます。
しかし、注意して見ると、実は白っぽく見えるだけで、微妙に色がついていることが分かります。
うどんに「白い」というイメージがあるのは、かつて小麦粉が漂白されていたことも関係しているのかもしれません。

 小麦は一度に粉にせずに何段階にも分けて製粉されていますが、それぞれの粉<上り粉(あがりこ)>は、原料の小麦粒の違った部位から製粉されたものです。
そのため、色相、灰分(かいぶん)量、たんぱく質量、グルテンの性質などが異なっており、製品化に当たっては、それぞれの粉の性質を見ながら組み合わせ、何種類かの品質等級の小麦粉に取り分けます(通常は、一等粉、二等粉、三等粉、末粉に分けられる)。

 これら仕分けされた小麦粉は、品質均一化のため混合機や篩にかけられますが、以前はこの時点で、希釈過酸化ベンゾイルなどの漂白剤による漂白が行なわれていました。
しかし、昭和52年以降、漂白剤は使用されていません。したがって、現在、わが国で市販されている小麦粉は、国内産、外国産を問わず、すべて無漂白の小麦粉で、自然のままの色です。

 ただし、小麦粉の色は、製粉後の時間がたつにつれて色素(主としてポリフエノール) が酸化するために、少しくすんだり、褐色がかったような色になります。

一般に、小麦粉の「製麺適性」が優れているとは、その小麦粉で作った麺の色が明るく冴えていて、いかにも食欲をそそるように見え、しかも食べておいしいという意味です。

 食べ物はその時代、時代のさまざまな要因の影響を受けやすいものです。
かつて小麦粉が漂白されていたのは、その時代には、真っ白な小麦粉が好まれていたからで、国内産小麦特有の、かすかに灰色がかった色が支持された時代もあります。
小麦粉の色はそのままうどんに反映されますので、時代によるうどんの色の好みの違い、ということもできるでしょう。
ひと口に「うどんは白い」といっても、微妙に色合いが変化してきているのです。

 漂白をしていない小麦粉の色は、製品の等級だけでなく、原料小麦の種類や産地などによって変わってきます。
 皮や胚芽をきれいに取り除いた小麦粉は、上位等級(一等粉)では淡いクリーム色をしていますが、下位等級になるにしたがって、少しくすんだり褐色がかったような色になってきます。

 品質のよい小麦粉がクリーム色に見えるのは、小麦粒の胚乳部に含まれるカロチノイド系色素によります。
一方、胚乳部でも皮に近い部分や、皮、胚芽には、フラボノイド系色素が多量に含まれています。
下級粉の小麦粉が褐色がかって見えるのは、この色素の含量が多くなるためです。
 また、上級粉になるほど灰分の含有量が少なく、冴えたきれいな色になりますが、下級粉は灰分含量が多くなるため、色にもくすみが目立つようになってきます。

 小麦にはさまざまな種類があるため、原料小麦による色の違いも大きいです。
たとえば、パスタ用粉の原料として知られるデュラム小麦の胚乳は黄色が濃いため、パスタも全般にクリーム色が強いですが、国内産の小麦は、前述したように灰白色に近い色です。

 現在、わが国で流通している小麦粉の原料小麦は、クリーム色が強いオーストラリア・スタンダード・ホワイト(通称A.S.W.)と呼ばれる品種です。
この品種が麺用粉の主流になっているため、うどんの大半は、正確には白ではなく、ごく淡くクリーム色がかった色合いになっています。

 しかし、輸入小麦に押されて減産の一途をたどっていた国内産小麦も、最近は少しずつ復活する傾向にあります。
絶対量としてはまだまだ少ないですが、国内産粉で打つうどんが増えれば、色合いの好みも変わっていくかもしれません。
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