小麦にはどんな栄養分が含まれているか

 小麦の玄穀(製粉する前の小麦粒)の約15%は皮と胚芽部分で、胚乳が残りの85%を占めています。
小麦粉として利用されるのはこの胚乳部分で、小麦製粉の目的は、胚乳部をできるだけ純粋に粉にすることです。

 胚乳の主成分は糖質(主としてでんぷん)ですが、たんぱく質や脂質、ミネラル、ビタミンも含まれています。
ただ、粒の中心部と周辺部とでは成分に差があり、一般には、次のような成分傾斜になっています。

・たんぱく質の量  周辺部に多く、中心部になるほど少ない
・たんぱく質の質  中心部のほうがよい
・灰分(ミネラル)の量 周辺部に多く、中心部になるほど少ない
・色 中心部のほうが白い。周辺部には、ポリフエノール等の影響によりくすみが出る
・でんぷんの量  中心部に多く、周辺部になるほど少ない
・脂質の量  周辺部に多く、中心部になるほど少ない
・ビタミン量  周辺部に多く、中心部になるほど少ない

 以上の成分傾斜の特徴をまとめると、主成分のでんぷんは粒の中心部に多く含まれ、中心部は粉にした時の色、たんぱく質の質とも周辺部より優れている。
逆に、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンの各栄養素は、粒の周辺部に多く含まれる、という傾向があります。

 小麦製粉は、胚乳部分のみを粉にすることが目的ですから、小麦粒を一度に砕かず、いくつものロール製粉機と目の違う篩(ふるい)を組み合わせて、段階的に無理のないように製粉していきます。
また、製粉機にかける前に、胚乳部を破砕しやすい硬さに調節するため、少量の水を含ませてタンク内にねかせておくのも、小麦製粉の特色です。
 大規模な製粉工場では、粉砕と篩分けが繰り返されることで、小麦粒は数十種類の粉<「上り粉(あがりこ)」>に分けられますが、それぞれ粉にした胚乳の部位が違うため、品質も微妙に異なっています。
製粉会社では、これらの上り粉の品質特性を見ながら組み合わせて、何種類かの小麦粉(製品)にまとめていきます。

 一般に小麦粉は、次の二つの分類の組み合わせで区別されています。
@種類 強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム・セモリナ
A等級(特等粉)、一等粉、二等粉、三等粉

 強力粉とか中力粉といった種類別分類は、含まれているたんぱく質の量によって決まり、その量はおおむね、次の通りです。
・強力粉  12.5〜14%
・準強力粉  10〜12.5%
・中力粉  8〜10
・薄力粉  6〜8%

 一方、等級別分類とは、カリウムやカルシウムなどの灰分(ミネラル)の含有量によって決まります。
灰分が多いということは、胚乳の周辺部の粉が多いわけで、その分グレードが低いという意味です。
 このように、小麦粉の栄養成分は、粉の種類と等級によってかなりの違いがありますが、ここでは、うどん作りに適しているとされる中力一等粉を標準にして、各栄養素の含有量について見てみます。

 炭水化物は74.8%で、食物繊維(2.8%)を除く大部分がでんぷんです。
小麦粉全般でも、三分の二以上はでんぷんということができます。
種類別では、薄力粉が最も多く、強力粉が最も少なくなっています。
また、等級別では、一等粉、二等粉、三等粉の順に少なくなっています。
等級が下がるほど、他の成分の含有量が増えるからです。

 小麦粉は栄養面からいえば、でんぷん(糖質)の重要な供給源ですが、加工上も、でんぷんの性質は大変重要です。
 たとえば、うどん独特の餅のような歯ごたえ、舌ざわり、のどごしなどの食感は、茹でることででんぷんが糊化(α化)した時の性質によるところが大です。

 たんぱく質を9%含みますが、これは白米(6.1%)よりも多く、そば粉(平均して10%以上)よりも少ない量です。

 小麦粉のたんぱく質の最大の特徴は、水を加えてこねるとグルテンを形成することです。
ただし、小麦粉のたんぱく質には、栄養面での欠点があります。
必須アミノ酸のひとつであるリジンの含有量が少ないからです。
 アミノ酸スコアは、そば粉(挽きぐるみ)の92、白米の65に対して、小麦粉は41と格段に低くなっています。
欧米人が肉食なのは、パン(小麦)だけでは不足するタンパク質を補う必要があったからでしょう。
リジンはそば粉には特異的に多く含まれていますが、一般に穀物偏重の食事を続けていると、たんぱく質不足になりやすい傾向があります。(186頁の表参照)

 しかし、うどんやパンなどの小麦粉食品は、肉類や卵といった動物性たんぱく質食品と組み合わせやすい特徴を持っています。したがって、うどんの場合なら種ものにするといった工夫により、たんぱく質の不足を補えば問題はありません。

 ミネラル(灰分)の含有量は小麦粉の色と密接な関係があるため、前述したように、等級を示す尺度として使われています。
また、小麦粉は栄養的に重要なミネラルはほとんど含んでいますが、絶対量が少ないのが欠点です。
一等粉の場合、強力粉、中力粉、薄力粉とも0.4%にすぎません。
しかし、白米の含有量も同じく0.4%であり、ソバと豆類を除く穀物一般に、ミネラル供給を望むほうが無理でしょう。

 また、製粉前の小麦粒には比較的多くのビタミンが含まれていますが、その大部分は皮や胚芽の部分に偏在しており、胚乳部の中心に向かうほど少なくなっています。
したがって、上級粉ほどビタミン含有量が少ないということになります。
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