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ソバの新芽(そばもやし)


 ソバもやしとは、ソバの若芽のことで「蕎麦萌」と書きます。地方によっては「そばなえ(蕎麦苗)」「蕎麦貝割れ」ともいいます。

 一般に、もやしというと、大豆もやしや緑豆もやしなどの豆もやしを指すことが多いですが、種子を水に浸して発芽させた穀類や野菜の若芽全般をもやしといいます。たとえば、ビールや飴の原料になる麦芽(ばくが)は、別名、大麦もやし。また、アルファルファは、本来は牧草として栽培されたムラサキウマゴヤシの若芽です。

 豆もやしは、暗室内で軟白化させたもので、「もやしっ子」などという言葉もあるくらいですが、ソバもやしの場合の「もやし」は、たんに若芽という意味です。その意味では、「もやし」とは呼んでいるものの、貝割れダイコンなどのツマミ菜の一種といえるかもしれません。

 近年、ソバもやしが注目されているのは、毛細血管を強化して脳出血などの予防に効果があるルチンが大量に含まれているからです。そば粉100gには約15mgのルチンが含まれていますが、ソバもやしの含有量は、その数倍ほどになります。

 ただし、ソバもやしの生長過程でのルチン含有量を調べた実験によると、光を当てて栽培したものは、遮光したものに比べて2倍近いルチン含有量になります。したがって、ソバもやしの場合は、豆もやしのような栽培法は向きません。実際、たっぷりと日光に当てたほうがよく生長します。

 ソバもやしは、江戸時代から料理の材料として珍重され、地方によっては薬効的な風習もあったようです。また、雪国などでは、野菜不足になる冬の時期にビタミン供給源として栽培されていました。

 ソバもやしの作り方については、文化元年(1804年)版『料理早指南(りょうりはやしなん)』に「もやしのこしらへやう」と題した記述があり、ソバについても書かれています。また、松江藩主松平不味公(ふまいこう)の茶懐石の献立(文化3年)にも、「蕎麦もやし、秋」として採り入れられています。

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