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お酒のあとに

 江戸の昔から、そば店は、おいしい酒を飲めることを売り物のひとつにしてきました。「そば屋酒」という言葉があるほどで、そばは酒と縁が深いようです。最近はあまり見かけなくなりましたが、かつては、もりそば1枚を肴に酒を飲み、もう1枚で腹を満たす、といった飲み方も多かったようです。

 そばと酒ということでは、そばどころの地方では古くから、秋の新ソバが穫れると、親類縁者や近所の人たちを招いて「蕎麦振る舞い」をする風習が伝えられています。収穫後の骨休めに開くそば会です。
 一般には、最初に「そば前」と称する酒が出され、その後にそばが運ばれてきます。手打ちのため、途中でそばが足りなくなりますが、「中割」といって場つなぎの酒が出され、そして最後に「箸洗い」と呼ぶ納めの酒が出て終わる、というものです。

 ところで、酒を飲んだ後は、そばを食べると体によいといわれていますが、あながち根拠のない話ではないようです。そばに含まれる成分には、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病を予防する働きがありますが、アルコールの飲み過ざによる肝硬変の予防にも効果があることが分かっています。肝硬変の前兆である脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が異常に蓄積した状態ですが、原因は、栄養過多やアルコールの多飲によるものが圧倒的に多く、とくに飲酒過剰の人は要注意とされています。

 そばには、ビタミンB群のひとつであるコリンという成分が含まれています。その意味では、酒の後にそばを食べることは効果的ということになります。
 ただし、コリンはアルコールの害を帳消しにしてくれるわけではありません。脂肪肝の予防効果があるといっても、飲み過ざては効果が追いつかないことはいうまでもありません。

また、ビタミンの一種であるナイアシンは、アルコールで荒れた胃壁を修復する作用があります。さらに、そばの良質のたんぱく質も、修復には好都合であると考えられています。

 ただ、先の「蕎麦振る舞い」でも、そばを味わう集まりで酒盛りではありません。
古今東西を通じ、酒はほどほどにするのが礼儀とされています。

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