山 葵
                わさび アブラナ科      原産地:日本、東アジア

 わさびは日本特有の香辛料で、古くから各地の山あいの沢や渓流で自生、または栽培されてきました。すでに奈良時代には、具体的な用途はわからないものの、料理に使われていたようです。

 現在もわさびの産地として有名な伊豆の天城山山麓の清流で栽培が始まったのは、江戸末期のことす。わさびの葉が家紋の葵の葉に似ていることから栽培を奨励していた徳川幕府が、栽培最適地として認め、開墾が進みました。

わさびの辛味の発現機構
 わさびの辛味は、鼻にツンと抜け、一時的で持続性が弱いのが特徴です。その辛味の主成分はアリルイソチオシアネートで、わさびに含まれるシニグリンという物質が、すりおろしたときに水分と酵素の作用で加水分解して生成されます。つまり、わさびのあの辛さは、すりおろして初めて生まれるものなのです。

 また、わさびの辛味は葉茎がついている上部ほど強く、わさび特有の辛味を十分に引き出すには、上端部からできるだけ細かく細胞を破壊しながらすりおろすのが、コツです。

どんなおろし器を使うかは、用途や好みによります。
滑らかな口当たりで辛味を効かしたい時には鮫皮、つぶつぶ感をだしながら辛味を抑えたい時はおろし金というように、うまく使い分けるとよいでしょう。
使う量だけ『の』の字を書くよう、やさしくおろしてください。
さらにすりおろしたものを小さな容器に入れ、3〜5分逆さにして置いたものが、
最も風味が良いとされています。

<わさびの上手なおろし方>
   形がよい 根茎は中太で、頭部も先端部も細くなく、円柱形状に近いものがよい。
   病気や
   傷がない
特にスミイリ病(表皮から深部が黒く変色)にかかったものは、すり下ろした時に黒みを帯び、点々と黒色が混ざるだけでなく、辛味も減る。一部では、一部では黒い点々が入っているのが当然のように思われているが誤解である。
   色が濃い みずみずしい緑色が濃いものが良い。
風味・辛味が強い 辛味があるのは当然だが、後味に甘味があり、風味が強いものが良い。
  粘りがある おろしたとき、粘りが弱いと風味の発散が早いため。



※ 参考
ホースラディシュ

同じアブラナ科ではあるが、わさびとは全く異なる大根(ラディシュ)の仲間。辛味成分はわさびと同じですが、香りの成分が異なり、大根に似た香りがします。

 わさびは、栽培条件が厳しく、収穫に3〜4年もの長い年月を要することから、一般にはなかなか手が届かない存在でした。そこで、量産が可能で安価な近縁植物のホースラディッシユを乾燥させ、粉砕して着色した「紛わさび」や、その紛わさびを練った「ねりわさび」が、広く代用品として使われてきました。
 1971年からは、本わさびを使用しホースラディツシユと共に生のまますりおろしてチューブやボトルに充填した「おろしわさび」が市販されています。

わさび ホースラディシュ
主な辛味成分 アリルイソチオシアネート アリルイソチオシアネート
主な香り成分 ω-アルケニルイソチ
オシアネート類
ω-メチルチオアルキ
ルイソチオシアネート
β-フェネチルイソ
チオシアネート
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